2023年03月12日

2月の本

庭の木々にも小さなつぼみ。
春が近づいてくるのを感じつつ、こんな本を読んでみました。

  ・新 怖い絵 - 中野京子

91j0mnOFroL『怖い絵』。印象的なタイトルの書籍は、後に開催された同名の展覧会も相まって、結構なブームだったんじゃないかな。

当時読みたかったけど、図書館本が貸出中でその後すっかり忘却の彼方…なんて、よくある展開を経て(笑)、今回初読み。
そして、またしてもシリーズ一作目は貸出中…。なんでやねん。

本書に収蔵されている絵画は次の通り。 フリーダ・カーロ『折れた背骨』
ミレー『落ち穂拾い』
フラゴナール『ぶらんこ』
バルデス=レアル『世の栄光の終わり』
ジロデ『眠るエンデュミオン』
ブグロー『ダンテとウェルギリウス』
ドレ『ジュデッカ / ルシファー(『神曲』地獄篇<34>)』
フリードリヒ『ブナの森の修道院』
ドローネー『ローマのペスト』
ゲイシー『自画像』
ティツィアーノ『パウルス三世と孫たち』
ミレイ『オフィーリア』
ダヴィッド『テルモピュライのレオニダス』
レービン『思いがけなく』
モネ『死の床のカミーユ』
マルティーノ『懐かしい我が家での最後の日』
カラヴァッジョ『洗礼者ヨハネの斬首』
ブラウン『あなたの息子を受け取ってください、旦那さま』
ゴヤ『鰯の埋葬』

フリーダ・カーロのハッと目を見開いてしまうような絵から始まります。名前もいくつかの作品も知ってはいましたが、彼女が肉体的に(そして精神的にも)こんな苦悩を強いられた人生を送ったとは初めて知りました。本作は自画像。脊椎のように体の真ん中を貫くのは古代風の円柱。革製のコルセット、体中に無数に突き刺さる大小の釘。どれを取っても、彼女の終わり無い苦痛や苦悶が伝わってきます。それなのに、絵からは強さも伝わってきます。

本書は絵の説明だけでなく、時代背景や作者の人生、関連する他作品や事柄などがコンパクトにまとめられています。今回は文庫本で読みましたが、絵画の細部を確認するには単行本で読む方がお薦めです。ネット検索で拡大して見るのもありかも。

今回初めて観て印象的だった作品は、『ダンテとウェルギリウス』、『ジュデッカ/ルシファー』、『ブナの森の修道院』、『あなたの息子を受け取ってください、旦那さま』です。

『ダンテと~』は、目を見張るばかりの肉体描写の生々しさ。故に、人間が人間の喉笛に噛みつくという衝撃的な描写には鬼気迫るものがあります。吸血鬼のように首筋ではなく、獣が獲物を仕留めるように喉笛に食らいつく。それはもはや人などではなく。

『ジュデッカ~』こちらもダンテの『神曲』を題材にしています。暗い地獄の底で氷から上半身を出しているのは巨大なルシファー。その手からは囓られている亡者の脚がはみ出しています。それにしても、でっかいな(笑)。

『ブナの森~』廃墟の修道院と冬枯れしたブナの木々。これだけで、陰鬱さと不安が押し寄せてくる。静寂と死が漂う。作者は幼い頃に妹、母、弟をそれぞれ亡くし、とどめのように姉が自殺-と死につきまとわれているような人生。特に弟は自らを助けるために事故死したため、罪の意識から次第に鬱状態となってしまったそう。そんな死が身近にあった作者だからこその作品なのかな。
他の収録作品と違って、写実的なタッチが印象的です。

『あなたの息子を~』は頁をめくった瞬間目が釘付け。何やら不思議な絵なのです。未完の作品とのこと。丸裸の赤子を取り巻く布の意味なんか、この解説無しでは決してわからなかったなぁ。
聖母子像のような構図でありながら、幸福感や暖かさは微塵も感じられない。

そして前から好きな作品、『オフィーリア』。
これまでずっと、既に死んだ少女の絵だと思っていたのですが、この先に死が待っているのですね。歌なんか口ずさんでる場合ではないですね(笑)。散りばめられた色とりどりの花、コマドリの赤い胸、鬱蒼とした森に咲く小さな花々。柔らかで穏やかな風景なのに、オフィーリアの口を半開きにし、虚空をみつめる瞳を見ると急にそこに死の色が浮かび上がる。彼女はどこまで流れていくのだろうか。

最後に異色な一枚、『自画像』。これを描いたのはなんと犯罪者。未成年への性行為で実刑を受けただけでなく、その後三十三人も殺害をしたシリアルキラーだ。ただでさえも、ある種の不気味さを持つピエロだけど、作者のことを知ると、その不気味さが俄然現実味を帯びてきます。
やっぱ、ピエロ、怖い。


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2023年02月09日

2023年1月の本

2023年最初の月は、こんな本たちでスタート。
めでたさは皆無…。

  ・いけないⅡ - 道尾秀介
  ・いけない - 道尾秀介
  ・あの子とQ - 万城目学


ikenai2読メで気になって1&2ともに図書館で予約していたら2の方が先に手元にきてしまった。どちらが先でも問題ないに違いないと言い聞かせ、とりあえず読み進めることに。

「その写真を見たとき、物語は一変する」とある。各話の最後に写真が挟まれているのですが、それを見ると本当の意味でことの真相がわかるという趣向のようです。ふむふむ。
では、超あらすじ~&各話感想~。

『第一章 明神の滝に祈ってはいけない』
一年前から行方不明となっている姉の手がかりを求め桃花が向かったのは明神の滝だった。そこで彼女が出会ったのは避難小屋管理人の大槻だった。

いきなり、ドキドキする話でした。とは言っても恋愛物語ではないです
(わかってるって?笑) 管理人と桃花のやりとりは現実に起こった事件をなぞらえてるようでリアルに怖い。えーっと、実は最後に写真を見ても「?」でした汗。もしかして、雪像がねずみじゃなくて牛になっていることと関係ある?と何やらモヤッとしたまま次の話へ進んでびっくり!あ、この物語、連作短編で登場人物や土地も被っています。次の話で前話の真相がさらりと明かされる感じ。

『第二章 首なし男を助けてはいけない』
夏祭りの夜に肝試しをすることになった真(しん)と仲間たち。いいだしっぺのタニユウを驚かせようと考えた作戦を実行するために真が頼ったのは、長年引きこもり状態にある伯父だった。

思い違いと言うものは誰にでもあるもの。ただ状況が特殊故に、思い違いが大きな悲劇を生む。ラストの真の心情が希望を持ったものだけに、写真を見た瞬間、「やっぱり、そうだよね」となり、このあと真が知るであろう良心の呵責を思うといたたまれない気持ちになりました。

『第三章 その映像を調べてはいけない』
息子を殺したと自首してきた父親。暴力を振るう息子に殺されかけての咄嗟のことだったらしい。虚偽の供述に惑わされる警察。息子の死体いきの場所とは。

これは、二重三重の驚きでした。正確には、これの次の話も含めてのことですが。ネタバレになるので言えませんが。被疑者の言葉を疑え、と作中にありますが、まさにそれ。でも、ただの嘘じゃない。この父親、相当の策士だ(笑)

『終章 祈りの声を繋いではいけない』
この話は書き下ろしです。第一章から三章までの物語の謎がほぼ解けます。あぁ…でもちっともスッキリ感はありません。むしろ、この先も暗澹とした中で暮らしていく人も何人かいるんだよね…というやるせなさというか。
ちょっと待って!最後の写真の意味って!あー、モヤモヤが止まらない。


ikenai
図書館の順番待ちの関係で、よりも後に読むことになってしまいました。

さて、第一弾はどんな感じだったのでしょう。お?【本書のご使用方法】なんて書いてあるぞ?ふむふむ。まずは物語を読んで、各話の最後には写真があるので、それを見て隠された真相を探してみるとな。よしよし。
おや?ご使用方法には更に続きが。
第一章 … 死んだのは誰か?
第二章 … なぜ死んだのか?
第三章 … 罪は誰のものか?
第四章 … ????????
これは俗に言う『ヒント』と言うものなのでしょうか。

では、超あらすじ&各話感想。ネタバレにならないように書かなきゃなので、本当に超あらすじです(笑)

『第一章 弓投げの崖を見てはいけない』 トンネル脇で起こった事故。警察の調査が続く中、犯人と目される人物が殺害される。

真相としては一番驚いたのですが、正直「えぇー?!いやいや…」と。ちょっと色々と無理があるかなぁ。でも、なんとしても復讐を成し遂げようとするあの人のことを考えると悲しいですね。
というか、『死んだのは誰か?』って…。え?え?一体、何?って、考えられるのはあの場面だけ…。私がまんまと欺された理由の半分は、Ⅱの方を先に読んでしまったことにもあるのかも(笑)。

『第二章 その話を聞かせてはいけない』殺されたと思っていたおばあさんは生きていた。一旦は勘違いをしたと思った小学生・馬珂だったが、彼はある真実に気づいてしまう。

なんでかはわかりませんが、読んでいてちょっと中だるみ。でも、人間って怖いっ。ついでに子供も怖いっ。
そして、『なぜ死んだのか?』もはや、何の話でしょう?状態ですわ…。真相を知ると、この設問そのものがミスリードな気が…。

『第三章 絵の謎に気づいてはいけない』
自宅で首をつって死んだ新興宗教団体・十王還命会幹部の女性。現場の状況から殺害の可能性も出てきた。捜査を進める竹梨と新米刑事・水元だったが…。

なんと!個人的には色々と驚かされた。というかある人物の独白が衝撃です。どこでボタンを掛け違えてしまったのか。
『罪は誰のものか』。うーん。確かに、誰の…。

『終章 街の平和を信じてはいけない』
一~三章の謎が回収される章です。ゆえにあらすじは書けません(笑)。
ラストの言葉を読むと、『平和を信じてはいけない』というタイトルがなんとも皮肉に、そして、この先に何かが起こるであろうという暗示でもあるような。

いやぁー、今回もなんやかんやまんまと作者のミスリードに翻弄されっぱなしでした。電車の中で読んでいて、思わす「えっ!?」と声を出してしまいそうでした。
今にして思えば、Ⅱの方が謎解き難易度としては低いかな?って、Ⅱでもしっかりミスリードされていたけど。
ネットの考察を読んで、「なるほど!」と腑に落ちた!もちろん、残っている謎もあるにはありますが、皆さん凄いなぁー。



Q
最近ご無沙汰だった万城目さんの本。

なんだか不思議なタイトルね、と思って手に取れば最新刊だったよう。

あーあ、結局『バベル九朔』は読んでいないまんまだな、と思ったりしながら読書開始。

なんといきなり、主人公とその家族が吸血鬼とな!
しかし今日日、吸血鬼は人の血も吸わず、太陽の下でも焼け死ぬことも無く、ニンニクも十字架もへっちゃらなのだ。それもひとえに彼らが『脱・吸血鬼化』と呼ばれる儀式を受けるから故。弓子も間もなく訪れる十七歳の誕生日に儀式を受けることになっている。
そこに登場するのがQ<と呼ばれるお目付役のウニのような外見の異形のモノ。
誕生日までの
10日間、弓子を監視するためにやってきた。え?どこからかって?それは追々わかることとして。

序盤は弓子が吸血鬼だということを除けば、親友・ヨッちゃんの恋バナやダブルデートとか、青春だねーという感じなのだが、このダブルデートでのとある事件から、不思議な世界へまっしぐら!
いつの間にか終わった儀式、消えた
Q、正真正銘の吸血鬼の登場と目まぐるしいストーリー展開にぐいぐい引き込まれます。

正直、昔の万城目作品ほどのインパクトや突飛さはないけれど、久し振りにハラハラしながら楽しみました。後半、少し急ぎ足な感じだったかな。ブラドのことも、もう少し掘り下げてもよかったのかも。まぁ、本が分厚くなるけどね(笑)

青春真っ只中の高校生活と、吸血鬼としての世界。タイトルからすれば、後者に比重が置かれるのだろうけど、その割には案外あっさり? ラストを読むに、もしかして、続編あり?それなら、このあっさり感もわからなくもないけど



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2023年01月15日

12月の本!

新年も明けて早二週間。
忙しかった12月はこんな本を読んでいました。

  ・よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続 - 宮部みゆき
  ・育ちがいい人だけが知っていること - 諏内えみ


71NjcsqchPL富次郎の聞き手振りもちっとは板についてきたかな?ということで第八弾。
瓢箪古堂へ嫁いだおちかもはや臨月を迎え。相変わらずそわそわしっぱなしの三島屋へ今日も語り手がやってくる。
今回は全三話。それでは、ちょっと長めの超あらすじ!

『賽子と虻』
玉の輿と羨まれた姉が誰かから受けた呪い。餅太郎は姉への呪いを己で被った。気がつけば神々が賭博に興じる里に。口をきく賽子、せっせと下働きをする人形(ひとがた)、そして、やがては消えてしまう人のなれの果て。餅太郎は現世へ帰ることを希望にせっせと下働きに精を出す。

『土鍋女房』
おとびの家は代々渡しの船頭をやっている。家長である兄は頑なに嫁を取ろうとしなかった。それは一族の男衆が決まって早死にするからであった。ある晩、おとびは兄の話し声を聞いた。普段の寡黙な兄からは想像もつかない甘い言葉も発している。こんな夜中に一体誰と。やがて、おとびは恐ろしい真実に直面する。

『よって件のごとし』
池に上がった土左衛門が生き返った。しかもそれに噛みつかれた男は土左衛門同様、人を襲った。池で繋がった隣村からやってきた「ひとでなし」と呼ばれる怪異。隣村を救うため池へ潜った真吾たちだったが、行った先は想像を絶する事態に見舞われていた。

おちかの夫である瓢箪古堂の勘一にはっきりいって嫉妬していた富次郎。本作で自分の心のわだかりも解けてすっきり(笑)そして、富次郎とは別におちかが気になって仕方の無い古参女中のおしまは、晴れておちかの世話役として瓢箪古堂で働くことに。
長年、他の店へ修行に出ていた富次郎の兄・伊一郎も三島屋へ戻って来たりと、色々と変化のあった本作です。

『賽子と虻』はスケールの大きな話。なんといっても神々の里ですからね。頁数も一番多く、幼少期の餅太郎が経験したお伽噺的な要素と、その後の過酷な運命という現実的な要素が相まって、ぐんぐんと引き込まれます。このお話が一番好きかな。
口をきく賽子がかわいい。ちょっとほのぼのしかけますが、物語そのものは過酷悲しいです。あと、虻の呪いがエグい。そりゃ痩せるよね。

『土鍋女房』は、「ははぁ、なるほどね」と頷いてしまう、ある意味古典的な昔話といった内容。個人的にはちょっと箸休め的な話でした。

タイトルにもなっている『よって件のごとし』えーっと、これはまさにゾンビストーリーです(笑)。
極めて現代的な「ゾンビ」という題材を、見事に江戸話に落とし込んでいるあたりは流石です。完全に謎が解けていない辺りも、江戸版・都市伝説的で興味深いです。

母のお民の希望で、おちかが無事にお産を済ませ落ち着くまでは変わり百物語は一旦休みとすることになりました。ま、まさか、このままシリーズを終わらせるつもりじゃないですよね、宮部先生?(笑)


51ZivJySIOS._SX344_BO1,204,203,200_図書館でなんと1年半以上待った。
この手の本との相性は最悪だと思いつつも読んでみた。
結論、やっぱり…ですよね。
しょっぱなから、おいおいって感じ。
なになに、育ちがいいと男性に受けがいい?彼氏の親に受けがいい?お受験でも受けがいい?そんなことを言っている段階で、既に「育ちがいい人」の定義は何?というか、育ちの良さを目指す行き先がそんなことかと思うと悲しささえ覚えますね。
ま、いわゆるマナースクールの先生が普段の授業をまとめましたって本。
別に書いてあることはごもっともなことなのでいいのですが、逆に言うとごもっともなことしか書いてない。ほんと、本ってタイトルで売るもんなんだなーと、改めて実感。
個人的には、「こんなの本に書くようなこと?」っていう事柄が多かったので、きっと私は育ちがいいのだな。うん(笑)。


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