2025年05月11日
4.5月の本!
鋭い方ならわかるハズ…。
・クスノキの女神 - 東野圭吾

『クスノキの番人』の第二弾です。
月郷神社にある不思議な力を持つクスノキ。今回の中心人物は、千舟と元哉です。
柳澤千舟は現在のクスノキの番人・直井玲斗の伯母。MCI(軽度認知症患)を患う彼女の手助けとなるため玲斗は柳澤家に同居しています。千舟と玲斗の経緯については前作をご参照ください笑
ある時神社にやってきた高校生・早川佑紀奈。彼女に頼まれ自作の詩集を神社で売ることになった玲斗。売るといっても社務所前に料金箱と一緒に置いておくくらいです。
誰も手に取ることのない詩集。しかし、それをある人物が読んだことから新たな展開が。ある人物とは、千舟のつきそいで訪れた認知症カフェで出会った中学生・針生元哉。
彼は脳腫瘍のせいで、一晩寝るとその日の記憶が全て消えてしまいます。
佑紀奈の詩にインスピレーションを得て、スケッチブックに次々と絵を描きはじめる元哉。
生きることに意義を見いだせなくなっていた元哉ですが、佑紀奈との絵本制作を通してあきらめていた夢を持つことに。
クスノキの番人としての自覚が出てきた玲斗も、今回は元哉のために奔走します。自分に関わる様々な人たちを巻き込み奮戦する様は、人としての成長を感じます。
前作の感想文にも書いてありましたが、この物語の主人公は登場人物全てと言っていいくらい、心情が細やかに描かれていると思います。単なる刑事としての登場かと思われた中里の意外な事情とか。
失う情報を補完するためこまめにメモをとる千舟。
翌日には消えてしまう記憶を日記に書き留める元哉。
それは、『過去を繋ぎ止める』ための行動。
佑紀奈と元哉の絵本が完成し、関係者を集めて開かれた朗読会。
朗読をするのは、最後まで難色を示していた千舟。
彼女の口から流れてくる内容は、力強く、温かく。
千舟と元哉。年齢も境遇も異なる二人ですが、生き方に対する向き合い方、心構えは、この絵本を通じてその行き着く先――『今を生きる』という境地へと結びつけられていったのではないでしょうか。
絵本朗読のシーンを電車の中で読んでいたのですが、ジーンときて思わず天を仰ぎました笑。
結末は切ないけど、決して後ろ向きではない、そんな物語でした。
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